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- 『俺、ツインテールになります。』
著者:水沢夢 イラスト:春日歩 出版社:小学館 特撮、というものは大抵「映像だから、ビジュアルがあるから描ける」、「小説で表現するのは難しい」と言われます。 そんな中、特撮と言うモチーフを文字で扱いながら人気を博した、ある意味で未来を先取りしたような小説があるのです。 特撮というものは得てしてSF、サイエンス・フィクションも扱う一面もあり、本作もまた、所々でいつか技術が完成するかもしれない科学を取り扱っています。 今回は、そんな目の付け所が鋭すぎた作品のご紹介。 ~あらすじ~ みつかそうじ 観束総二はツインテールを愛する普通の高校生。 ある日、彼の前に異世界から来たという美少女・トゥアールが現れる。 時を同じくして、総二の住む町に怪物たちが出現! 「この世界の全てのツインテールを我らの手中に収めるのだ!」 エレメーラ 彼らは人々の精神エネルギー『属性力』を糧にする異世界人だった。 テイルギア トゥアールから、強力なツインテール属性で起動する『空想装甲』を託された総二は、幼女のツインテール戦士・テイルレッドに変身! ・ ・ こうして異世界の変態たちとの壮絶な戦いが始まった!? このようにあらすじの時点でアクセル全開な本作。 「ツインテール」と「特撮番組」の二つが主な要素で構築されています。 その上で、特撮における怪人が各々「性癖」と呼ばれるものに精通しているプロフェッショナルとも言える存在となっています。 全体的にポップで明るく、時には暗めの話も。と読みやすい内容になっております。 また、本作に限らず著者である水沢夢先生の作品は「自分の心を力にして戦う」と言うテーマが込められており、本作に至っては分かりやすく精神エネルギーと言う形で登場しています。 あれが好き、これが好きと思う心の力を、戦う力として利用する。 エレメーラ 「属性力」とは、そういった思いの力、精神が生み出すエネルギーなのです。 主人公たちは、ツインテールが好きと言う心を利用して怪人と戦う力に変換する。 テイルギア それがあらすじに書かれている「空想装甲」なのです。 主な舞台は現代日本ですが、使われている技術は基本的に現代にはあり得ないもの。 異世界から襲い掛かって来た敵に対して異世界の未知の技術で戦っていく。 こう書くと少しSFらしいと思います。 実際の所、今の世界には精神的な物をエネルギーにして何か生み出したり、動かしたりなんて技術はないわけですし。 いつか未来でそんな便利そうな技術が現実にならないかなぁと思っています。 なんなら作中さらっと変身中に身体の構造作り替えるなんて事もしていますし。トンデモ技術のオンパレード。 とまぁ私が未来的な話を見出した要素はこれくらいなのですが、それを抜きにしても大変面白い作品となっております。 当たり前のようにツインテールと言うワードが飛び交っていたり、怪人たちとのバトルは熱かったり。 各話に怪人解説が挟まれていたり、最後の方には主人公側の解説が載っていたり、特撮が好きな方も大変楽しめる内容になっております。 本編は既に完結済みなので続きを待たずに最後まで一気に読めますし、現在著者の水沢夢先生本人がコミックマーケットにて番外的な話を出しているので、供給不足も無く。 隅から隅まで楽しめる、かなりおすすめの作品となっておりますので是非一度お読みください。 Text:2年 石川剣門
- 『天才少女は重力場で踊る』
著者:緒乃ワサビ 出版社:新潮社 全世界で好評を得たビジュアルノベルブランド<Lpalacian>の代表、企画、シナリオを務める緒乃先生の著作であり、小説家としてのデビュー作。緒乃先生のノベルゲームをプレイしていたこともあり、こちらの本を手に取った。 『天才少女は重力場で踊る』は、卒業単位欲しさに研究室を訪れた主人公「万里部 鉱」と、異様なまでに不機嫌な天才少女「三澄 翠」の王道SFラブコメディー。 作中には、未来との交信を可能にする【リングレーザー通信機】なるものがあり、その起動実験の後、主人公はうっかり未来を観測してしまう。 未来から交信してきた人物は、自身を三澄翠であると自称しており、「わたしとあなたが恋をしないと、世界は終わる」と告げ、主人公を悩ませる。 凡才と天才、潔癖と無頓着、家事力100と0。真反対で相性最悪な初対面をした二人が、どのように関わり変わっていくのか、恋をしないとなぜ世界が終わるのか。 不機嫌な美少女 × タイムパラドックス × 暴走する量子 恋愛面も謎も目を離せないにも関わらず、気軽に進められる読み心地。 おすすめの一冊です。是非。 Text:2年 栗田大地
- 『校正のこころ』
『校正のこころ』 出版社 創元社 『校正のレッスン』 出版社 出版メディアパル 著者 大西寿男 まず、知らない人のために説明をすると、「校正」というのは文字を直すことです。簡単なところから言えば、誤字脱字を直すこと。少しレベルをあげると、その漢字や文字が文に合っているか確認すること。 「校閲」と呼ばれる段階に行くと、文に使われているデータ自体を疑って、実際に図書館に足を運んだり、調べたりして事実関係を明らかにしたりします。 ここまでが「校正」の初歩であり、私がすべての人に最低限学んでほしい内容です。 今回のBook&Movie Selectionでは『校正のこころ』『校正のレッスン』をおすすめします。 校正をすると、文がきちんとなります。 逆に、校正のされていない文はどうなるのかと言うと、様々な危うさを秘めることになります。 間違ったことを伝えて相手に嘘を伝えてしまうかもしれない。 本当に伝えたいこととは違うことを印象付けてしまうかもしれない。 良いことを言っていても、最後に誤字をしたことで無知を晒してしまうかもしれない。 ちなみに三つ目には実例があります。「虫さんが走る」と検索してみてください。 これらすべて、しっかりと文を見直し、あるいは読み直し、時間を置いて、声に出してまた読み直せば、違和感を感じる部分を見つけることができます。 そうやって、校正によって背筋をしっかりと伸ばした文章には、力がつきます。どこから見てもかっこいい文章になります。 言葉や文字は、とても強い力を持つ魔法です。人から人へと伝わる中で、より強大になることがあります。ほんの一言、ため息のように漏らした一言が、遠く離れた場所で人の心を追い詰めることもあります。 おまけに、今はインターネットを通じて様々な人同士がやり取りできる時代です。言葉の持つエネルギーは、距離や時間で減衰することなく相手に伝わり、それが良い意味でも悪い意味でも強い影響を与えます。 これはたとえ話ですが、銃には安全装置がついています。容易く人を殺すことのできる道具ですから簡単に暴発してしまわないようセーフティがかかっているのです。 同じように、言葉や文字にもセーフティをかける必要があると思います。 相手を傷つけてしまわないか、間違って伝わってしまわないか、それらをしっかりと「校正」の力で見つけ出し、言葉を正すことが大事なんです。 『校正のこころ』は、校正の歴史、成り立ちから始まり、校正をする際に必要な心がまえなどに触れていきます。手に取りやすく、内容もとても興味深いものでした。一般の方に「校正」を知ってもらうための良い本だと思います。 『校正のレッスン』は、校正者としての実体験や、実際に校正をする作業を教えてくれます。本格的に校正者を目指すなら読んでおくべき一冊と言えるでしょう。(この本を読んだからと言って必ず校正者になれるわけではありません) 今回、この二冊の本の著者である大西寿男先生に取材することができました。 私が記事を書き、実際に大西寿男先生に校正をしていただきました。(大変恥ずかしながら、また光栄ながら赤字は多かったです) Fu:rootsの16番目に載っているので、本を取ってみるかどうかの判断材料になれば良いなと願います。 Text:3年 森暉理
- 『科学がつきとめた「運のいい人」』
著者:中野 信子 出版社:サンマーク出版 あなたも『運のいい人』になりましょう!! どこかの宗教勧誘か?と思った方が大半と思いますが、決してそんなことではありません。 みなさんは、自分の運が良い悪いと普段から感じたり考えたりすることはありますでしょうか? 私は占いを結構信じていたりするので、その日の運勢などをよくチェックしたりしています。 ある日、占い本で何かないかなと探している時に今回紹介する本。 「科学がつきとめた『運のいい人』」に出会いました。 まずタイトルを見て、「科学がつきとめたってなんだ?」と首をかしげました。 私は『運』というものは非科学的なものであり、信じ方や考え方だけでも人の数だけあると思っていました。それが科学によってはっきりしたという旨のタイトルに興味を惹かれ、気が付けば手に持っていました。 この本の内容を一言で表すのならばそれはずばり──『ポジティブな人ほど運が良くなる』です。 何を言っているんだ?と思うかもしれません。私も思います。 良くも悪くもその一言でしか言い表せないのです……!! この本の伝えたいことは読んだ人にしか分からないでしょう。私はそう感じています。 皆さん一度は手に取って頂きたいと思います。 Text:2年 加賀爪玲哉
- 『魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?』
著者:手島 史詞 出版社:HJ文庫 「好きな子のためになら、何処までも強くなれる──!!!」 戦闘シーンはかっこよく、キャラが多く個性豊か! 主人公とヒロインのムズムズとしたやりとりが最高です。 主人公は世間一般から悪と呼ばれる魔術師・ザガン。悪友のバルバロスと共に『魔王』の遺産が売られる闇オークションへ向かい、そこで商品として売られていた少女に一目ぼれして買います。 好きになった人と話すどころか、そもそもまともに人と話す機会が無かったザガンは初めこそ緊張して上手く接することができませんでしたが、徐々に距離を縮めて行きます。 ある時、自分とずっと一緒にいては他の魔術師に狙われてしまうのではないかと不安になり、あるきっかけから彼女を自身から遠ざける決断をします。 しかしザガンは気付きます。自分は魔術師である。魔術師は自分の欲しい物を全力で取る存在だと。 ならばすべて自分のものにして、彼女を堂々と日の下で暮らせる世界にすればいいと。 そんな思考がぶっ飛んだ主人公がヒロインの少女とイチャイチャしながら強くなっていくお話です。 Text:2年 加賀爪玲哉
- 『fate/strenge/fake』
出版社:電撃文庫 著者:成田良悟 聖杯戦争とは、七人の魔術師が過去の英雄をサーヴァント(使い魔)として召喚し、最後の一人になるまで争う、そしてその勝者には「すべての願望」を叶える権利が与えられる。 あらゆる時代あらゆる英雄が現代によみがえり覇を競い合う殺し合いそれが聖杯戦争である。 日本の冬木市における第五次聖杯戦争から数年後、アメリカ西部に位置する地・スノーフィールドにて聖杯発現の予兆が見られた。魔術協会の調査の結果、これは何者かがオリジナルの聖杯戦争の技術を模倣したものである事が判明。不完全な模倣ゆえにシステムには欠陥が存在し、在るはずのクラスが欠け、選ばれるはずのないサーヴァントが呼び出される。そしてアメリカのとある国家機関の思惑により、都市の外からも多くの魔術師達が流れ込み、「偽りの聖杯戦争」が開幕する。 他方、本作の主人公アヤカ・サジョウは、フィリアを名乗る女性から5つの令呪と呪いを押し付けられたことをきっかけに、スノーフィールドに入る。そこでは、アメリカ陣営に属する魔術師・カーシュラが、セイバーを召喚しようとしていた。カーシュラがアヤカを拘束してまもなく、アサシンが現れ、その命を奪った。そして、セイバーとして召喚された リチャード は、魔力の経路(パス)がその場にいたアヤカとなぜか接続されたことで現界を維持している。アヤカはフィリアの思惑に乗るまいと聖杯戦争への参加を拒絶するものの、マスターと勘違いされた成り行きもあり、セイバーと行動を共にする。 私が紹介する一巻目は各陣営の特殊形態、特殊状況だらけのキャラ紹介、聖杯戦争が始まるまでの様子を、一組ずつ丁寧に描いてて全員の活躍が楽しみになります。 登場キャラが多くサーヴァント同士の戦いを読むのもすごく楽しいです。 Fateにはこの作品だけではなく、あまたの作品がありますが55人もの多くのキャラクターで聖杯戦争をするのはこの作品だけなので見ていてドキドキします。 ぜひどの陣営が聖杯を手にするのかその目で確かめてみてください! Text:3年 鈴木勇也
- 『サピエンス全史』
著者 ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳者 柴田裕之 出版社:河出書房新社 皆さんは自分たち人間、いえ、ホモ・サピエンスがどのように生まれ、どのように世界を征服したのかをご存じでしょうか。 他のBook&Movie Selectionでは未来についてみんな触れていますが、今回は「過去」について触れていきます。一つ安心してほしいのは、この本は確かに「ミライを考える必読書」であることです。 人類はどのように生まれたのでしょうか。 世界史の授業では4大文明「メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・ 黄河文明」から文明が生まれていったとか、日本史の授業では縄文時代の狩猟採集民族である頃の日本を習ったりしたでしょう。生物の授業では、私たちが猿から進化したことを教わったかもしれません。 では、こんな話をご存じでしょうか。「人類はホモ・サピエンスだけではない」ということを。私たちは猿から進化しました。しかし、その進化は様々な人類を同時に生み出したのです。 調べてみると、実に多彩な種類のホモ属が発見されています。考古学によって発見された彼らは、しかし実際に相対してどんな人たちだったかを確認することはできません。彼らは滅び、唯一ホモ・サピエンスだけが残り、そして世界を征服しました。 これだけでも興味深い内容ですが、驚くべきことにこれはサピエンス全史の上巻の第一部、それも最初の方でしかないという点です。 私たちホモ・サピエンスには素晴らしい特徴があります。 それは、「嘘をつき、そしてとても騙されやすい」ということ。 サピエンスの歴史と言うのは、本当にあった虚構の話なのです。 未開の狩猟採集民でしかなかったホモ・サピエンスをまとめたのは宗教でした。 家族でない二つの集団がお互いを信じられたのは、同じ森に住み、その森の精霊に守られているという物語によって集団が結束したためです。 現代でも、私たちは日本という国に生まれ、住み、国の法律によって守られているという物語を信じているからこそ、知らない人を信じることができるのです。 「噓つきは泥棒の始まり」とよく言いますが、本当は「嘘つきは文明の始まり」と言えるかもしれません。 しかし、科学というものが生まれると、恐ろしいことが起こりました。噓がばれ、本当のことが次々と暴かれたのです。 科学が進み、産業革命が起きると、とにかく物を生産することが第一になりました。労働者はブラック企業で働き、日々苦しい思いをしてお金を稼ぐようになりました。 19世紀、世界の文明の頂点と言えるロンドンでは、暴力や殺人が横行していました。 それに対し、 各地の民族は清潔で、秩序を持って暮らしていたのです。 この差はまさに「科学」であると言わざるを得ません。 『サピエンス全史』を読み、人類というものをより深く学び、そして人類はどこに向かうのか。ぜひとも考えてみてください。 Text:3年 森暉理
- Advertising is TAKUYA ONUKI Advertising Works
『Advertising is TAKUYA ONUKI Advertising Works』 著者:大貫卓也 出版社:グラフィック社 今年度は「未来」をテーマに掲げている。 大貫先生を調べていた時に大貫先生のデザインに「新しさ」を感じた。 Advertising is Takuya Onuki Advertising Works 1980-2010は大貫先生のこれまで手がけた全仕事のアイデアやデザインをオールカラーの一冊に凝縮した初版本をコンパクトにした新装版になっている。2011年以降の仕事も加えており130ページ補増している。 Advertising is Takuya Onuki Advertising Works 1980-2010 の初版はこの世に2500部しかない幻の書籍になっていて業界内でも大貫先生の全仕事の評価が高い事から、この書籍の評価も高く2018年度のADCグランプリを受賞している。 Advertising is Takuya Onuki Advertising Works 1980-2010の中の文章では、大貫先生の幼少期の頃から今のデビューするまでの事や「新しいということが最大の価値だった」このタイトルのように、大貫先生が衝撃を受けたもの、「デザイン」への考え方、どういうものを見てどう見ているのか、読んでいるだけで自分と物の見方がどう違うのかを感じさせてくれる。この本の中ではデザインの中の世界観やできるまでの過程などを細かく語ってくれていて自分の中にないデザインを引き出してくれる。 「常に新しい」が大貫先生の中の判断基準だ、常に新しいものを作り出す創造力を見ることが出来る。 大貫先生はイメージに合わせてデザインするのではなく個性を押し出すようなデザインひとつひとつが大貫先生の個性を象徴するようなデザインで大貫先生のデザインは「未来」を感じさせる、時代を合わせない新しいデザインを模索している。 Advertising is Takuya Onuki Advertising Works 1980-2010 は仕事一つ一つを見るだけで大貫先生の個性をダイレクトに感じられるような一冊となっている。 大貫先生の「個性」をまた、「未来」を感じさせるデザインを体感してみてほしい。 Text :1年 鈴木 勇也
- 『ホモ・デウス』
著者:ユヴァル・ノア・ハラリ 出版社:河出書房新社 本作は、世界的ベストセラーを記録した『サピエンス全史』の著者である「ユヴァル・ノア・ハラリ」による人類の未来にスポットを当て、飢饉、疫病、戦争に対処可能となった人類は次は何を目指していくのかをひも解いていく本となっています。 本作のタイトル『ホモ・デウス』とはホモ属のデウス科ということで、ラテン語で「ホモ=ヒト デウス=神」という意味になっています。 つまり、冒頭で記述した人類が次に何を目指すかといいますと、それはずばり「神」です。 しかし、人類は神を目指すにあたって究極の悩みを持つようになってしまいます。 それは、我々人類は何をもって判断していいかわからなくなってしまったということです。 人を殺してはいけない、嘘をついてはいけない、結婚する相手は一人でなければならない、これらはすべて神の教えによるものです。 今までの人類は判断を神に委ねてきました。 ですが、今後もテクノロジー発展すれば、人はサイボーグのような体で不老不死も実現できるし、脳みそに直接幸福成分を打ち込んで人工的に幸せを作ることだってできる。人類は無敵に近づいていく。 さて、人類は誰に判断を委ねればいいのでしょうか。 本作ではそれを「データ」だと提言しており、人類は「人間至上主義」から「データ至上主義」へ移り変わるだろうと予言しています。 「データに命令されても実行するのは人間でしょ」と思うかと思いますが、すでに我々の生活でそのような予兆が見え始めています。 例えば、美味しいレストランを探す際食べログを見ていたり、GoogleMapで最短距離の道のりを進んだりと、すでに大量のデータが出す結論を信じて疑わないようになっているのです。 我々人類は、データをまるで神様のように扱うようになる。 ただ、これでは冒頭で記述した「人類が神を目指す」とは少し意味が違う気がします。 では、如何にして人類は神を目指し、神になるのでしょうか。 是非、お手に取って確かめてみてください。 Text:2年 髙野 広輝
- 映画『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』
監督・脚本:S・S・ラージャマウリ 配給:ツイン ※このコラムは『バーフバリシリーズ』のネタバレが含まれております。 『バーフバリ』とは、S・S・ラージャマウリ監督によるインドの歴代興行収入最高額を記録した有名な映画である。二部構成で作られた叙事詩的映画であり、2015年に第1部である『伝説誕生』、2017年に第2部である『王の凱旋』が公開された。 この作品は、父と子のふたつの視点から描かれた、王にまつわる物語である。 当コラムでは、『バーフバリ』シリーズの好きな点について、大まかに記させていただく。 曲と映像 自然や生き物、キャラクターの衣装が色鮮やかだがくどくない。インドの織物や花、シヴドゥがアヴァンティカに入れるタトゥーなど、とにかく色彩が美しいのである。 また、『バーフバリ』は曲も良い。耳に残り、言語がわからずとも思わず口ずさんでしまうような魅力があるのだ。特に第1部の主人公・シヴドゥとヒロイン・アヴァンティカの『Pacha Bottasi』という恋愛のデュエットソングでは文学的で情緒のある歌詞に、甘い歌声のアヴァンティカとそんな彼女にくびったけなシヴドゥの様子が声色でわかるように歌われている。 第2部の主人公で、シヴドゥの父であるバーフバリを称える『SAAHORE BAAHUBALI』では、バーフバリという人間がいかに勇敢で王の器を持っているかを力強い歌詞と歌声で表している。 ストーリー内でも映像の美しさや臨場感はあるが、曲が流れている際はそれがさらに際立っており、観客の心を強く掴むひとつの要因になっているのだ。 役者の演技分け 主人公であるシヴドゥとバーフバリは、主にトリウッド(テルグ語映画)で活躍しているプラバースという役者が一人二役で演じている。バーフバリという勇者であり王の魂を継いでいるということを暗に示す為にこの配役がなされたのだろう。 二人は親子であるが、そもそも生まれ育った境遇が全く違う。シヴドゥはとある所以から庶民として育ち、バーフバリは生まれも育ちも王族である。育てられ方がまず違うため、シヴドゥは庶民らしいとっつきやすさがあり、村の中でも変人のように扱われながらも愛され尊敬されている。だがバーフバリは、庶民への優しさや尊敬は忘れることなく常に下々の民のことも考えながら生きてはいるが、丁寧な所作や滲み出る王族としての雰囲気や品があるのだ。同じ役者だというのに『シヴドゥ』と『バーフバリ』だとまとっている雰囲気が全く異なるのである。 また、それはアヴァンティカを演じるタマンナーもそうであると言えるだろう。最初に彼女が登場した際は、シヴドゥの幻想として現れた。彼の理想の天女のような姿で甘く歌いながらシヴドゥを導き、癒しながらも翻弄する。だが実際の彼女は誇り高き兵士であり、剣技に優れ、敵をまっすぐ見つめながら殺すことのできる強さを持っている。天女と兵士という極端な存在の演じ分けには感服する。 恋愛描写 先ほど挙げた『Pacha Bottasi』では、シヴドゥとアヴァンティカが一時の青春、甘い恋の時間を共にする曲なのだが、二人とも数回ほど衣装が変わる。色味や小物を合わせた、いわゆるシミラールックで歌い、踊り、愛を語り合うのだ。 また、これは第2部のヒロインでシヴドゥの母であるデーヴァセーナも同じだ。夫のバーフバリと共にシミラールックで登場することが多く、デーヴァセーナがマヒシュマティへ嫁いだ後に何度も衣装が変わったが、すべてをシミラールックで固めていた。 これは個人的な意見だが、このシミラールックとは心を通わせている男女を表すのにもってこいの表現だと思っている。実際に漫画などでも、想いを寄せ合う恋人同士の服がシミラールックになっていたり、逆に恋人同士でも心がない場合は全く違う色の服を着ていたりと、服の色とは恋人同士の『心の関係性』を表しているのだと思う。ただ愛を語らうだけではない、言外でも想い合っているのだということを表されているのがとても素敵だ。 少し話が脱線するが、『Pacha Bottasi』の歌詞の中にはアヴァンティカがシヴドゥを「いたずら好きな恋人」と歌うシーンがある。勝手にタトゥーを入れた男を「いたずら好き」で済ませるアヴァンティカの心、あまりにも広すぎやしないだろうか。 親子愛 『バーフバリ』には、親から子への想いが血と共に強く受け継がれているのが色濃く描写されている。それと同時に、子から親への強い想いも描かれているのだ。 例えば、冒頭部分、シヴドゥの養母サンガが1000回以上にわたって御神体に水をかける願掛けの儀式を行うシーンがある。それを見たシヴドゥが「俺が代わりにやる」「俺が母さんを川まで運ぶ」と言い、最終的には御神体を滝の真下まで運んで「未来永劫水が注がれ続ける」と笑った。母の願いのために自分ができる最大のことを行う姿は、とても親想いなキャラクターだと言えるだろう。 また、シヴドゥがデーヴァセーナを助け出した際に、前述とはまた違う親子の絆が描かれていた。罠にかけられてしまったシヴドゥが目を覚ますと、悪王バラーラデーヴァの息子バドラがデーヴァセーナを虐げているのを目にして激昂する。勢い任せにバドラを殺害し、その後、バーフバリの側近だったカッタッパに「初めて会った女の涙を見て心が痛んだ」と語った。これは、本当の母であるデーヴァセーナとの見えない絆がありありと描かれているシーンだ。 バーフバリとカッタッパもまた親子愛と言えるだろう。王子と従者という関係ではあるが、バーフバリはカッタッパを「私の父のようなもの」と言い、それ以外でも「おじ上」と呼び慕っている。 そして、『バーフバリ』において語るべき親子愛と言えば、やはりシヴァガミとバーフバリの関係だろう。血縁上は本当の親子ではない(バーフバリは前王と前王妃の子。なので厳密にはシヴァガミとは伯母と甥の関係である)が、バーフバリはシヴァガミを何よりも尊重し、慕い、時には子として甘えることもある。途中でバラーラデーヴァの策略により険悪になり、バーフバリは王宮を追われてしまうが、バーフバリは「いつでも母上のために駆けつけます」と言い残し、シヴァガミもバーフバリを案じ、想っていた。 このように、バーフバリは恋愛も友愛も親子愛も、全てが色濃く描かれているのも美点のひとつだと思う。 予想の範疇を超えた派手なアクション・ストーリー 2022年に公開された同監督の映画『RRR』などを見るとおり、S・S・ラージャマウリ監督というのは派手なアクションや精巧なCGを用いることを好んでいるのがよく伝わってくる。それに加えて予想を軽く超えるストーリーや人間離れのアクションが多い。とにかく「自分が表現したいもの/観客に見せたいものをたくさん出す」という強い気概を感じるのである。 シヴドゥが雲の上まで続いている滝を登るシーンや、雪山で起きた雪崩から逃れるシーン、バラーラデーヴァの黄金像を支えたシーンなど、主人公の圧倒的なフィジカルの強さを感じられる。 そしてバーフバリが戦の際に布を用いた戦法を編み出したり、シヴドゥがマヒシュマティに乗り込む際にヤシの木を用いて人間弾丸を作るなど、観客が「そうくる!?」と驚く展開が続く。その勢いに観客は呑まれ、気付いたら見入ってしまうのだ。これは映像ならではの強みだと思う。 何よりも、前述したとおり監督の「好き」が詰まっているのだ。王道ストーリーなのに、良い意味で商業的でなく感じられるのは、監督が楽しんで映画を撮っているからだろう。 近年、インド映画が日本によく進出してくるのを見かける。きっかけとなったであろう『RRR』はもちろん、それ以前に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ(日本公開:1998年)』『きっと、うまくいく(日本公開:2010年、2013年)』なども有名だ。 私の観た作品だと、『ランガスタラム』『K.G.F』などもそのブームの中で日本にやってきた作品である。特に後者の『K.G.F』は、ラージャマウリ監督が大絶賛したためか現在インドにおいて最も興行収入を獲得した映画となった(後編では冒頭でスペシャルサンクスとしてラージャマウリ監督の名前が載っている)。 神話を絡めた話も多いため、インドの神話や『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』などの叙事詩などを知っているともっと楽しめる。 今後もインド映画への期待はますます膨らんでいくばかりだ。 Text:3年 中村 倫
- 『2040年の未来予測』
著者:成毛 眞 出版社:日経BP 最近よく話題として挙がる『2040年』という年。この年にいったい何が起こるというのだろうか。私はそんな疑問を抱いているときにこの本を見つけた。 『2040年の未来予測』は、元マイクロソフト社長の成毛眞が、2040年の日本と世界の可能性を探る一冊です。彼は、地震や気候変動、人口減少など、将来起こりうる大きな変化について、その背景と影響を詳しく分析し、読者に警鐘を鳴らしています。 しかし、この本は決して未来を暗示するだけのものではありません。むしろ、テクノロジーの進化や個々人の選択が未来を変える可能性についても探求しています。 ・中身まですべて個体で出来ている『全個体電池』。将来の電力の問題を大幅に解決するといわれています。その理由とは!? ・5Gからいよいよ6Gへ!家電製品が全てインターネットへとつながり、さらには車の『全自動運転』が可能に! 成毛氏は、最悪の事態を想定することで、読者が自らの人生において前向きな選択をする助けとなると説いています。 この本は、悲観的な未来予測に陥るのではなく、現実を受け止め、未来に備えるためのヒントを提供しています。この本を読んで、一緒に未来を想像してみませんか。 Text:2年 飯島 太陽
- 『ソードアートオンライン』
著者:川原 礫 出版社:KADOKAWA 皆さんはVRと聞いてどんなものを思い浮かべますか。様々な用途がありますが、やはりゲームと答える人は一定数いると思います。更に一歩踏み込んで”フルダイブ”と答える方もいるでしょうか。 今回はその”フルダイブ”という概念を広めるきっかけのひとつでもあろう作品、『ソードアート・オンライン』を紹介していきます。 ~あらすじ~ 仮想空間へのフルダイブが可能になって初の本格的なVRMMO、魔法がない剣の世界『ソードアート・オンライン(SAO)』のサービスが開始した。 だが、SAOの開発者の宣言により、突如としてデスゲームへと変貌した。 クリアまで脱出不可能、ゲームオーバー=現実での死。そう告げられた主人公・キリトは、はじまりの街をひとり早々に駆け出し、一人孤独なサバイバルへと身を投げる。 それから2年、キリトはSAO内最強ギルドに所属する女流剣士・アスナと出会う。アスナからのコンビの誘いを受けたキリトは、今まで知らなかった世界を教えてくれたアスナや仲間たちとともにゲームのクリアを目指す。 ということでもう少しかみ砕いて説明しますと、伝えたいのが本作では一巻で内容が完結しているということ。デスゲームの幕開け。アスナとの出会い、恋愛、イチャラブ、そしてラスボスとの対決。ですので最新巻まで読まなくとも楽しめる一冊になっています。 逆にアニメを見た方は「え、あのキャラでないの?」となるかもしれませんが、続く2巻で多くのヒロインたちが登場します。本筋の攻略部分が1巻に集約されており、各ヒロインとのエピソードが短編集の形で2巻にまとまっています。 またこのアインクラッド(SAOの仮想世界の名称)の物語は、攻略の様子を一から描くプログレッシブ(全8巻で刊行中)なるものがあるので、キリトとアスナのイチャイチャが見たい方はこちらもオススメしたいです。 本作にも出てくる”VRMMO”、今でこそ創作物では多く扱う設定ではありますが、その走りとでも言える作品だと思います。 本作では《ナーブギア》と呼ばれるヘルメット型のゲームマシンを着用することで、VRの仮想空間へと意識を繋ぐことができるようになっています。脳とデバイスをリンクさせることで、五感すべてで仮想空間に完全に入り込むことから「完全ダイブ」→「フルダイブ」となっています。 この技術を待ち望む人は、筆者含め数多くいると思います。しかし、現実問題としては非常に難しく、技術的な問題はもちろん、脳が直接かかわることによる倫理的な問題も挙げられます。 現代のVRマシンを見ても、遮断が簡単な視覚と聴覚しか機能していません。 ですが、未来のことは分かりませんし「事実は小説より奇なり」とどこぞの竜王のように、平然とフィクションを超えてくることもあります。 VRもそのように進化すればいいなと心の隅で願うばかりです。 ということでアニメだけでなく、小説の『ソードアート・オンライン』もぜひ見届けてみてください。 今回、SAOの小説の紹介をさせていてだきましたが、今年度は『ソードアート・オンライン-アノマリー・クエスト-』のプロデューサーの方に取材をさせていただく機会がありました。 『アノマリー・クエスト』のことはもちろん、VRについてなどのお話も聞くことができたので気になった方はチェックしてみてください。 Text:3年 飯田 鈴馬