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F interview14

​白昼夢の青写真 ​メインビジュアル1/2

シナリオの方程式が紡ぐ。
​忘れられない、少女の物語

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ビジュアルノベルゲームブランド

〈Laplacian〉代表


緒乃 ワサビ

精緻なシナリオと美麗なイラスト、それらを彩る演者や名曲が混在一体と化す。

そんな全世界で圧倒的な人気を博した、ビジュアルノベルゲームブランドがあった。

文章に携わるわれわれ編集ゼミにとって、無視できない文章力に関心を寄せた。

その作品に込められたテーマや信念。

緻密な構成力を持った緒乃先生が考える、ミライについて聞く機会に恵まれた。

プロフィール

緒乃ワサビ(おのわさび)

1988年生まれ

早稲田大学先進理工学部卒、専門は理論宇宙物理学。

ビジュアルノベルゲームブランド〈Laplacian〉の代表。

2022年に発表した代表作『白昼夢の青写真』では企画・原作・シナリオを担当。

過去作は『キミトユメミシ』『ニュートンと林檎の樹』『未来ラジオと人工鳩』。

2024年7月には、新潮社にて『天才少女は重力場で踊る』を出版。

『白昼夢の青写真』とは

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『白昼夢の青写真』はNintendo SwitchとSteamで配信されているビジュアルノベル。全世界で高評価を得て、2023年7月29日には、正統続編となると長編ビジュアル朗読劇『朗読劇 白昼夢の青写真 CASE-_ 誰がためのIHATOV』(ろうどくげき はくちゅうむのあおじゃしん ケースブランク たがためのイーハトーヴ)が上演された。

2024年8月3日には、朗読劇が再演された。

2024年11月10日には、『白昼夢の青写真 LIVE 「Epiphany」』(はくちゅうむのあおじゃしん ライブ エピファニー)が公演された。

朗読劇

LIVE

ヒロイン紹介

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CASE-1のヒロイン 波多野凛

学生でありながら妖艶な魅力を持っている少女。

年相応の未熟さや、嫉妬心というギャップがとても可愛らしい。​​​​

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CASE-2のヒロイン オリヴィア・ベリー

演劇を愛し、一座の座長を男装して務めている。勝ち気で男勝りな女性。

その性格は後天的に覚えた振る舞いであり、心の奥底には乙女心を秘めている。​​​

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CASE-3のヒロイン 桃ノ内すもも

物事を深く考えない生き方をしている、お洒落が好きな教育実習生の少女。

真面目ではないものの、自分の気持ちを大事にしている。明るく純粋で、笑顔が眩しい。

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CASE-0のヒロイン 世凪

とある事情により、開始時点では自我を失っている少女。

三つの夢の進行に応じてゆっくりと自我を取り戻していく。

※重大なネタバレになる恐れがあるため、世凪の人物説明は省きます。​​​

取材

『白昼夢の青写真』の中で、思い入れのあるヒロインやモデルになった人物について

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感情を追体験できるように描く

作品の中で一番気に入っているキャラクターは桃ノ内すももです。今までの作品の中でも、一番自分好みのキャラクターかもしれません。

異性の話をするとき、付き合いたい人と結婚したい人は別、なんてよく言いますが、付き合いたいのもすももですし、結婚したいのもすももです。それくらい、ヒロインとしてのキャラクター造形がうまくいきました。

どのヒロインにも、自分の中では実在のモデルが存在してはいます。しかし、その人たちをそのまま描いているわけではなく、その人たちと過ごしながら自分自身が覚えた感情を追体験できるように描きました。なので、仮にモデルとなった人たちをユーザーさんに引き合わせても「似ている」という印象にはならないと思います。

最近の趣味や、制作メンバーとのエピソード

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身体づくりに効率的

最近の趣味は逆立ちです。逆立ちの完成系を目指す過程で体幹が鍛えられたり柔軟性が確保できたり、丈夫な身体つくりをするうえで効率的なんじゃないかと思って、気がつくとハマっていました。

会社の制作メンバーは、代表の私とデザイナーの上都は高校の同級生なので、20年来の付き合いです。原画担当の霜降とぺれっとも高校の同級生なので、この二人も15年来の付き合い。少数メンバーで高校の同級生が二組いるのは結構珍しいかもしれないですね。

ほかのメンバーもジワジワと長い付き合いになりつつあって、離職率が極めて低いのは経営者として密かに自慢だと思っています。

文章を書くことが好きだと気づいたきっかけと、その後の変化

気軽に原稿用紙を埋められない

学生のころから、読書感想文やレポート課題など、原稿用紙を埋める類の課題が苦になったことはありませんでした。なので、当時から自然と「文章を書くことに適性があるんだろう」とは思っていましたが、プロになってからは昔ほど気軽に原稿用紙を埋められなくなりました。

期待して買ってくれるユーザーを裏切れないし、書いている文章の品質、作品の面白さが会社の売上げにも直結します。作業の気楽さはなくなったし、書くという作業に対しての好きという感情も薄らいだかもしれません。

でもその分、書くという作業がより身近に、生きるうえで自然な活動になったような気がします。

それに、作品が完成したときの達成感は何物にも代えがたいですね。

学生時代に取り組んだ挑戦と、自信や準備について

​起業に抵抗はなかった

大学2年生のころに、フルタイムのインターンシップに参加しました。日本国内ではレンタルオフィスのパイオニアだった企業で、たくさんの経営者を顧客にもつ会社でした。

その会社で、入居者である経営者へ取材を行い、記事をウェブサイトにまとめるのがインターン生の仕事でした。期間中、取材させてもらった経営者は約50人で、お会いしたのは200人以上だったと思います。

そこで、経営者というのがどういう人たちなのか、どのくらいのスキルの人たちがどういう苦労をしているのか。たくさん話を聞かせていただいて、学生だった当時は良くも悪くも、経営者というものを知った気になれました。

その経験があったから、学生中に起業することにほとんど抵抗はなかったです。雇われて働くよりも事業を立ち上げるほうが自分に合っていそうだという見込みもありました。

でもやってみたらやはり、想像できていなかった苦労の連続でした。

当社は2024年で14期目ですが、よくここまで続いているものだと、我ながら感心します。

少人数のチームで成果を効率よく生み出す方法について

常に作業効率の最大化

『白昼夢の青写真』という作品は、自分達ラプラシアンというブランドにとってもターニングポイントとなった作品です。ゲームだけではなく、朗読劇や音楽ライブという興行イベント、小説刊行と、いろいろな媒体での活動ができるようになりました。

 

外部からはいろいろな分野に手を広げているように見えているかもしれませんが、制作部隊である6人のメンバーは全員、作品作りに集中できています。

原作を武器にしてビジネスパートナーを得られたおかげで、仕事内容は同じでも発表の舞台が大きくなりました。

『白昼夢の青写真』は、長期的に売れるものを作ろうと目論んではいたのですが、想定よりも遥かに多くの人の評価を得られました。運の要素もかなり大きかったと思います。

ラプラシアンを立ち上げるときは、経営者かクリエーターの二択で選べない時期がありましたが、今は明確に作品づくりに集中すると決めています。

 

作品をつくることで収益を生むシステムが整ったので、管理や経営の具体的なタスク処理も信頼できる仲間に任せられるようになりました。

とは言っても、開発部隊の人数は最小限に抑えているので、作業効率の最大化は常に考えてます。

会社としての生存戦略と言ってもいい至上命題でもあります。

その一貫として今は、ひとつの原作から小説とゲームを同時に制作することに取り組んでいます。

小説の次回作では、付き合いのある出版社さんに協力してもらって小説制作の場にゲーム開発部隊も参加させてもらって、最初からゲーム化を見越して小説を作っています。あまり例のない順序での取り組みになるのではないかと。

メンバーと行った取り組みについて

メンバーの意思統一

『白昼夢の青写真』を企画するとき、今作は「シナリオがいい」と言ってもらえる作品にしようと決めたんです。ビジュアルノベルという作品においてはそれがもっとも商品寿命を伸ばす評判だろうし、メーカーとしても次のステージにいくキッカケになる、という見込みがありました。

その方針を制作現場に落とし込むと、シナリオが最適であることが優先されて、イラストがボツになることもあれば、キャラクターデザインが地味になることもあります。今作においては、それをよしとして進めようと決めました。

逆に、「ヒロインが可愛い」ことを最優先にする現場では、かわいいイラストを登場させるためにシナリオを変えるはずです。季節はずれでも水着のシーンがあったり、シナリオ的には意味がなくてもヒロインへの愛着が深まるシーンが長く続いたり。

 

こういう商品設計はヒロインの可愛さを押し出す戦略ですし、それはそれで正解です。でも今作ではそういうものは排除すると、メンバーの意思統一をしました。

結果的に、その方針がユーザーに届いて、当初思い描いていたよりも大きな展開ができる作品となりました。​​

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