top of page

やれば進む、進めばやれる

しい毎日を送る中で実践への行動力を湧きあがらせ

やることをやり抜きやり遂げるために心掛けていることは

 

 私もいつも締め切りに追われている身なので、逃げ出したくなる瞬間はあります。でも現実から目を背けたところで、当然ですが締め切りは延びてはくれません。

 仕事というのはすごく不思議で、今忙しいから他の仕事が来ないでほしいと願っているときに限って仕事が大量に来てしまうのです。そして暇なときに限って、全然仕事が来なかったりします。

 仕事が仕事を呼ぶとよく言いますが、まさに忙しいときにどんどん入ってきてしまうので、焦ってしまいがちですが、そこで逃げ出すのではなく、まず心を落ち着かせるために手をつけることからはじめてみます。

 

 やっているうちに不思議と少し落ち着いてきます。なぜ落ち着くかというと、嫌でもとりあえずやっていれば、やった分進むからです。そのことが締め切りに向かって進んでいるという感覚を得られ、すこし安心できるのです。

 やる気というのは湧いてこない、やっているうちに湧いてくると、どこかで聞いたことがありますが、そのとおりだと私も思います。

普段どのような気持ちで絵本を描いているのか

 

 小さな子どもを対象にして描くと自分で決めているので、「小さい子がこの場面で喜ぶかな」「もう少しここに細かくいろいろなモノを描いてあげたらワクワクしてくれるかな」などと想像しながら描いています。

 子どもたちは草花の一本一本までよく見ているので、絵本をつくる身としては大変ですが、描きがいもあります。

企業のデザイナーを退職し

『そらまめくんのベッド』でデビューするまではどのように過ごしていたか

 

 会社には3年間在職していたのですが、そのうちの後半は都内にある絵本創作教室を見つけ、週末の土曜日の夜、隔週で絵本作家の川端誠先生の講座を受講していました。

 そこでは具体的に絵本の作り方をレクチャーしていだだき、とても興味の持てる充実した内容でした。

 

 会社での仕事と併行して1年間、川端先生の講座に通っていましたが、ほどなくして退職し、そのあとは、編集者の松田素子さんの講座を受講しました。

 その講座の中で、川端先生の講座の時に制作した『そらまめくんのベッド』の元原稿になるラフを描き直し松田さんに見てもらったところ、予想外に良い感触を得られたので出版社に持ち込みをしたくなり、いくつか出版社をご紹介していただきました。

 

 そのうちのひとつが福音館書店で、一番最初に持ち込みました。幸運なことに、その時の持ち込みで採用が決まりました。

 私が採用されたのは月刊誌の絵本で、そこでは来年度の枠で……という形でお約束していただけたのですが、そこからトントン拍子というわけにはいかず、持ち込みをしてからきちんとしたお返事をいただくまでに数か月はかかり、実際に出版されるまでには丸1年かかりました。

 これでもかなり早いほうではあります。出版されるまで5年くらいかかる絵本も普通にあるからです。

 

 絵本を出版するまでのあいだ会社を辞めているわけですが、生活費などはどうしていたのかと、みなさんは気になるところだと思います。

 当時私は埼玉県の実家暮らしで、都内の出版社にはすぐ行けるような距離でしたから、交通費はさほど問題なく環境的には恵まれていたと思います。とはいえ実家もそこまで裕福ではなかったので、自分にかかる最低限の生活費は確保しなければと思っていました。

 そこで会社を辞めると決めてからの1年間は、無駄なお金は一切使わず節約に励み、お給料ボーナスその他諸々、全部貯金していました。友達の誘いも最低限度にとどめていたので、当時の私はかなり付き合いの悪い人でした。

 でも、そんな私とも変わらず仲良くしてくれた友だちがそばにいてくれたので、孤独や疎外感は感じませんでした。むしろ応援してくれていたので、とてもありがたかったです。

 

 会社を辞めたあとは、もちろんアルバイトなどをして最低限の生活費を稼ぎながら、絵本の創作を続けていました。実家になけなしながら3万円程度の生活費を入れ、税金や社会保険等だけでも、毎月の固定費を捻出するのは大変でした。

 会社員の時に貯金した蓄えを取り崩し、なんとか生活をまわしていましたが、ダラダラするのも良くないと思い、とにかく3年間だけがんばってみて、絵本作家の芽が出なかったらその時はすっぱりと諦めて、またどこかに再就職しようと決めていました。

 当時まだ23歳だったので、失敗してもいくらでもやり直せると思っていました。

2021年3月から自身で立ち上げたホームページにどのような反響があったか

 

 コロナ前に新刊が出たときは、サイン会などのイベントを開催していて、読者に直接会うことができましたが、そうしたイベントもコロナ禍でほとんど中止を余儀なくされました。そうなると新作が出ても、読者に気がついてもらうまで時間がかかり、なかなか気づかれないことが多いのです。

 それでは少しもったいないと思ったので、私の絵本に興味を持っている人たちに、新刊のお知らせをいち早くお知らせできたらいいな……という思いでホームページを作りました。ですから反響などは最初から気にしていませんでした。

 

デッサンの重要性と絵本作家として行うルーティンについて

 

 デッサンは創作を表現するための基本になりますので、できればずっとやっていたほうがいいと思います。

 例えばラフを描くときも、デッサンが上手であれば早く正確に描くことができるので、作業がとても楽になり、その分たくさん仕事をこなすことができます。

 なるべく苦手の無いよう、どんなものでも描けるようにデッサンを繰り返し、物の特徴を頭に叩き込んでおくと良いと思います。何かを形にしようと思い立ったとき、とても役に立ちます。

 今の私はなかなかデッサンする時間が取れていませんが、クリエーターのみなさんは時間が許す限り続けてほしいです。

 

 ルーティンとしては、遠出する機会に本屋さんを見かけたら必ず立ち寄ります。この地域ではどんなものが売れていて、どういう本が並んでいるのかと、自分なりに分析してみます。

 案外地域性の特徴があり、おもしろいです。

ロナ禍での生活で以前の生活からはっきりと変わったことは

 

 やはり人と直接会う機会が減ったことでしょうか。そのおかげと言ったらすごく変なのですが、自分にとって本当に大事な人や必要な人とピンポイントで会うようになりました。

 コロナ禍でお互い会うのは必要最低限にしましょうという雰囲気になりましたが、それによって時間がとても有意義に使えるようにもなりました。

 コロナ禍はステイホームで、ずっと家に居なくてはいけないという風潮でしたが、絵本作家の私にとってはそれが日常ですので、遠出できないことや家から出られないことへのストレスというのはあまり感じませんでした。

海外の絵本作家と対面した機会は

 

 過去に一度だけ『ミッフィー』の作者の(故)ディック・ブルーナさんとお会いしたことがありました。

 

 ブルーナさんは日本がすごく好きな方だったらしく、よく来日していたようです。私は銀座の教文館という老舗の本屋さんで『そらまめくん』などの原画展をさせていただいた機会があったのですが、そのときもたまたまお忍びで遊びにいらしていて、偶然お会いできて大感激したことがあります。

 

 本当に写真で見た雰囲気そのまんまの、ひげがチャーミングで優しい笑みの方でした。失礼ながら、すぐさまブルーナさんの絵本を購入し「サインしてください!」と頼み込みました。

 ご本人にその場でサインしてもらった絵本は、私の一生の宝物です。

お子さんが成人し自身も還暦が間近に迫ってきている状況での今後の目標は

 

 還暦までまだ10年ほどありますが、あっと言う間にきてしまうんだろうな……と思います。

 コロナ禍を過ごす中でいろいろと価値観も変わりましたし、体力的にも今まで通りにはいかないことが増えました。最近は腰も痛くなって、机に長時間向かい続けるのがとても辛くなってきています。

 

 今後についてですが、実はそんなに欲張ってもいなくて、自分が描きたい作品は描き切った達成感のようなものもあります。

 ですから、無理のない範囲で新刊を細々と発表できたらいいなと思っています。

現状の日本政治について思うこと

 

 私たちの世代以降は、もちろん年金のことや老後の心配もありますが、それよりも若い人達の将来のほうが、私は心配です。

 

 まず、働き方の仕組みや価値観が急速に変わってしまいました。

 私達のいわゆる昭和の世代は、一つの会社に定年まで働きつづけることができたので、良い意味で安定し、人生設計もたてやすかったと思います。勤め先の会社が一つの共同体となり、そこで働く社員達に技術の継承や仲間意識の芽生えがあり、お互い助け合えていたことも多かったです。

 今は個人主義というか、それぞれがスキルを高めてどんどん転職する時代なので、自分の能力をずっと研ぎ澄ましていかないと、職にあぶれて生活できなくなる人も出てきてしまうと危惧します。

 今は1度つまずくと孤立してしまい、なかなか普通の生活ができなくなってしまう怖さもあり、このコロナ禍でも職を失った若者が炊き出しに多くならんでいる、という報道を見聞きしています。

 そうなると自分の生活もままならないので、結婚なんて考えられないと思いますから、必然的に少子化になるのは当然のことでしょう。

 こういった社会をすこしでも改善していくには、やはり政治の力が必要であり、私達の生活を良くするためには、政治に関心を持ち、投票に行くことが最も大切だと思います。

 自分には関係ない、どうせ変わらないと諦めモードの人は当然たくさんいるわけですが、せめて投票ぐらいは行かなければだめです。

 投票に行かないことは、白紙委任するのと同じことです。とても危険な行為だと思います。

治を絵本に盛り込むことはできるか

 政治というのはセンシティブなものですので、そのまま絵本のテーマにするのはとてもむずかしいです。

 ただ、私が何か狙ってやれるのなら、「ずるい思考を持つとこういう風になってしまうよ」ということをテーマに、因果応報をさりげなく取り入れたものを作ってみたいなと考えたことはあります。

 子どもたちに「こんな大人になってはいけない」、「こんな大人になりたくない」と思わせるような、ほんのりブラックな面白さを交えた作品ができればいいなと思っています。

 反面教師的に、汚い大人を清い児童書の世界で描くのは意外と斬新というか、それを世間に提示することで良くも悪くも反響が得られると予想します。

 今はこのような自由な発想を、自由に発言することが許されている世の中だから良いですが、そうではない時代が来ることだって十分ありえます。

 自分が作った物を何の検閲もかけられず、みんなが自由に見られる機会を奪われないように、みなさんも他人事にせず政治にも少しは目を向けてほしいと思っています。

昨今の表現規制について思うことは

 

 YouTubeなどのSNSも最近はいろいろ規制がかかってBAN(配信停止)されたりします。配信者やインフルエンサーなんかにしてみると、自由に意見を言えないのはもどかしいと思います。

 特にコロナ禍になって、政府側に都合の悪い情報を発信してしまうとすぐにBANされてしまうようで、NGワードを言わないように工夫して発信しているユーチューバーもいるようです。

 

 ただここで重要なのが、なにを持ってNGワードとなったのか?ということを意識することだと思います。NGワードの規制された理由をよく考えることで、規制された意図の裏になにが隠されているのか想像することが重要かと思います。

 もちろん言うまでもありませんが、あきらかに人権を差別したり無視した発言、誹謗中傷にあたいする発言は100%NGです。

急速に移り変わるこの時代に伝えたいこと

 世の中が急激に変わりつつあり、おかしな方向に向かっているときも、立ち止まることなく、いけいけどんどんで進んでいく世の中が怖く感じます。

 「一旦考え直した方がいいのでは?」と切り出そうものなら逆にその人が悪く言われ、流れを止めるのは良くないみたいな風潮で、なかなか声が上げ辛くなるのには嫌な感じを覚えます。

 なにぶん世の中には様々な意見の方がいます。私は子どもを持つ母親でもあるので、親の視点からすると、これからの若い子たちの生活は大丈夫かな?と、どうしても心配になってしまいます。

 仕事をする上で今の若い子たちとやり取りをする機会がたまにあるのですが、本当にみなさん真面目で、こんなに一生懸命やっている子たちが不完全燃焼のまま報われない社会はおかしいと思っています。

 コロナ禍の閉塞感のようなものを感じる今の世の中で、なかなかタフに生きるのは難しくなってきているとは思います。そんな現状の中で新しいものをどう表現していくかは、クリエーターにとって大きな課題だと思います。

 今は大変な世の中ではありますが、自分が思うことをしっかりと発言し、表現し、それをきちんと形にして発表し続けてほしいです。

bottom of page