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「自分にはできる」という自信が大事


 

創作意欲が刺激される時について

 (アイデアは)24時間考えているので、恐らく寝ている間も考えてるんです。寝る前に考えて浮かばなかったことが、起きた時に「これだ」と思って急いでメモすることもあります。

 あとは漫画じゃないにしろ「次こういうことやってみたい」とか考えることもあります。

 今は(漫画を)お休みして違うことをやっているんですが、「次はこういう活動してみたいな」とか、そういうことを常に考えて動いています。私の場合は動いていることが目的というか。

 今年の7月8月だと、頼まれていないネームを200ページ描いていました。コマを割って絵を丁寧に(描いて)って。でもそれは結局没にしたんです。

 ただそれはその2ヶ月が無駄になったわけではないです。2か月間自分がそれを考えて、動いて、描いてたってことが大事なので。仕事にはならなかったけど、いつかなるかもしれないし。

 「常に何か新しいことをやろう」「新しく何かをやりたい」という気持ちが、大学に入った18歳くらいの頃から常にあるんです。その時(大学生の時)はダンスや演劇、現代美術などをやったりしていました。

 「何かをずっとやり続けている」とことに関してはずっと変わっていないです。

 アイデアが浮かぶ、浮かばないっていうのは、リラックスした時に浮かびやすいとか、確かにそういったこともあります。ただ多分それはたまたまなんです。ずっと考えているから、リラックスしているときに浮かんだりするし、寝る前に浮かぶこともあります。

 だからこればっかりは、どういう時っていうのはないんですよね。

 今は少し違うことをやっていて、「それをどうやってマネタイズしていこうか」「これをどうやったら世に出せるかな」とか、その方法を考えたりします。

 クリエーターってストーリーを考える・お話を考えるだけではなくて、それをどうやって最終的にマネタイズまでするかを考えるのも大事なんです。その後にその作品でお金を得て、その資金を元に次の作品を描くわけですので。

 この2か月間、仕事してないでネームを描いていましたが、2か月間無収入になっても大丈夫なのは、その前にちゃんと仕事していたからです。

 今やっている作業も家にいて絵描いてるだけなんです。だけどちゃんと仕事をすべきなのは来年以降ですし、だからほとんど1年間お金になることやっていなくても大丈夫なのは、その前に頑張っていたから。だからこの年は創作に打ち込めるんです。

 今描いているものをどうやったら次に繋げるか。その方法もまだ詰めている段階で、デザイナーや編集者に会ったりしながら、「こういう方法で出したらどうだ」「これは展覧会とか開いて、それである程度回収したらどうだ」と考えます。

 そういったお金の流れを合わせて考える必要がクリエーターには絶対ある。だから、ある程度回ってきたらそのお金でクリエーティブをする。

 やっぱり、貧乏でもいいものが描けたらいいってものではないと思います。それ(マネタイズ)を同時に考えていくというか。

 本当は学生のうちに足がかりを作るのが一番大事なんですよ。今のうちにやっておいて、例えば何か賞をもらってお金になるとする。そうしたらその賞金をもとに親元を離れて、次の生活に活かせる。

 とにかく時間内で足がかりを作るって言うのは結構大事なことで、次のステップを作る、それが大事だと思います。

 最後の1,2年から「よし放り出されるぞ」という覚悟を持って、何かをどうしたら足がかりが作れるのかな、というのを真剣に考えると、学生時代が無駄にならないです。

 

 でも私は(大学を)出てからそういったことを考えました。その時は漫画家になると決めていたわけではないから、「学校の先生になれば親元は出られるし、出てから考えよう」と考えていたので。だから私は、学校の先生をやりながら漠然と考えていました。

クリエーターとしての信念・心構えについて

 信念というよりも性質ですね。回遊魚のような、泳いでないと死んでしまうような、そういう類だと思っています。

 何かしら描いていたい、作っていたい、発表していたい、活動をしていたい。それが人目につかなくても、何かをやっていたいタイプなんだろうと思っていて。やらざるを得ない「何か」がそうさせているというか。

 若い頃は何とか名を馳せたいとか、いろんな人に名前を知って欲しいとか。漫画っていう表現でお金を得て、生活を潤沢にしたいというのは若い頃はあったし、信念というよりも必死だった。

 そういう意味で言うと、(今は)いろいろなファンの方にお会いしたいっていう気持ちが強いです。全国を回ってサイン会をしているのもそういった理由です。いろんな方にお会いして、地方の今まで会えなかった方にこちらから会いに行く。そういうことを今はやりたいなと思っています。

 「やりたい」という気持ちが強くあって、「自分にはできる」という根拠のない自信があるのが大事なのかなと思っています。

 私も(昔は)何者でもなかった。18歳、19歳の時は白塗りして坊主にして暗黒舞踏をしていたんです。とにかく「何か表現していたい」って気持ちや根拠のない自信が強くありました。

漫画家として読者の方々に対してのメッセージ

 考えても無駄なことがあるので、あまりメッセージは考えないですね。その通り受け取ってもらえなかったりするし、説教くさくなっても嫌だし。

 みんなが飽きないような物語を描くのが私の仕事で、メッセージを届けることが仕事じゃないので。読んだ方がそこからどういうメッセージを受け取るかっていうことが大事なんじゃないかなって思うんです。

 例えば『帝一の國』だったら、帝一が成長していく姿を見てみんなが何かしらのメッセージを感じてくれたらいいなとは思います。

 帝一を見て「あ、自分も頑張ろう」って思える人もいるかもしれないし、不屈の根性に対して頑張ろうと思ってくれる人はいるかもしれない。

 でも自分は帝一っていう一人の生きざまをどうやったら面白く劇的に描けるかっていうことを考えていたので。

 『ライチ★光クラブ』も、あの話をいかにドラマチックに、みんなが飽きないように心にガツンと届けられるか、ということだけを考えて描いていました。

 そうしたらそれを読んだ人が、「自分はこういうメッセージを受け取った」「私はこの世界観のものが心に残った」と言ってくれることもあります。

 例えば最後、カノンに「あなたたちは人を殺したから、最後にあなたたちも殺されてしまったわね」みたいなことを言わせてしまったら興ざめじゃないですか。

 自分の中にはメッセージとして「悪いことをしたら自分に返ってきますよ」という意味もこめています。ただ、それは言葉にするわけにもいかないし、それが一番のメッセージかと言われるとそうでもない。

 あの物語を皆さんが飽きないように楽しめるように、最後まで心に残るような物語にどうしたらできるかということを考えて描いています。

 

 物語を考えるんじゃなくて、意識して潜るんです。その世界にキャラクター達を置いて、それでその世界に自分が潜る。

考えるというと「ううん」って(唸る)感じになるんです。そうではなく、その世界の中にダイブして身を置いて、そうして考えます。

 なのでよくある「うーん、浮かばない……」みたいな、そういうのとはちょっと違います。だけど身を置いてもその先の展開が見えないときはずっと見えないです。そういうのを多分浮かばないって言うんだと思います。

リエーターとして今後の目標など

 あまり先のことって考えていなくて。今やっていることをいつも考えていて、大きな遠い展望をあんまり考えたことはないんです。

 だから、今作ってるものや今やっていることを「どうやったらいい具合に着地できるかな」「どうやったらいい感じにみんなに届けられるかな」と考えています。

 そういうことを常に考えているので、目標は「今目の前にあることをいい形で着地させたい」というのが、常にある目標です。

※注釈6

江口寿史(えぐちひさし)……1956年生。漫画家、イラストレーター。代表作は『ストップ!!ひばりくん!』『すすめ!!パイレーツ』など。

 

※注釈7

諸星大二郎(もろぼしだいじろう)……1949年生。漫画家。代表作は『妖怪ハンター』『西遊妖猿伝』など。

 

※注釈8

吾妻ひでお(あづまひでお)……1950年生2019年没。漫画家。代表作は『ふたりと5人』『不条理日記』など。

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