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「魂がこの『創る』仕事を欲している」

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これまでの仕事について詳しく教えてください

元々私はプログラマーとして働いていたのですが、2001年に転職をしましてソニーミュージックに入社しました。そこから13年ほどはウェブディレクターとして働いていました。

 

大量のウェブサイトを正確に、わかりやすく作るということをひたすらがんばっていました。同じつくる仕事でも、今のようなエンターテインメントとはだいぶ異なる仕事をしていました。

 

そして2014年からは現在も担当している、新規事業の仕事に携わり始めました。1~2年が経ったころ、今でも話題に上がることがあるのですが『めざましマネージャー アスナ』というアプリをリリースさせていただきました。テレビや車での音声認識のシステムや合成音声を使って、キャラクターと対話できないかということから、初めて『ソードアート・オンライン』の許諾を得て、ソニーと共同で開発を始めたものになっています。

 

実験として開発を始めたものですから、充分にマーケティングできたわけではないのですが、一部のユーザーにはとても喜んでいただきました。PRもまったくしていないのに100万ダウンロードもしていただいて、「アスナってすごい」とあらためて驚きました。

 

こういったことを機に、エンターテインメントと最新の技術を掛け合わせることで、新しい楽しみ方ができると実証ができたので、社内には次はどうしようかというムードができていきました。その流れの中で、先ほども話した2019年に開催した、『ソードアート・オンライン ‐エクスクロニクル‐』の企画も始まりました。『ソードアート・オンライン』の世界を振り返るときに、最新の技術を詰め込んだらどんな体験になるか、というのを存分にやらせていただきました。

 

私の仕事としては、ほかにも「DinoScience 恐竜科学博」や「VRデビルマン展」であったり、最新の技術にいろいろなものを掛け合わせて、新しい体験や遊び方を提案してきましたし、これからも提供していきたいと思っています。


 

この業界に興味を持ったきっかけはありますか

 

はい。エンターテインメントというのは誰もが好きだと思います。

元々バンドマンでしたので、音楽が好きだったのに加え、なにより昔から漫画が大好きで、20年以上前の話ですが、ネットで漫画書評をやっていたりもしました。名作・傑作漫画はほぼ読み尽くした人として、名の知れたサイトで活動していました。そういった過去もあり、なにかしらエンターテイメントを創り出したいとは常に考えていました。

実際に影響を受けた作品はありますか

 

たくさんあるのですが、これだけは外せないという2作品だけ。

1作品は『デビルマン』です。初めて読んだときには、ただ日が暮れるのを何時間もぼんやり見つめる、そんな状態になってしまうほどの強いショックを受け、心の中に響いてきました。

デビルマンの影響を受けた作品がたくさんあり、日本のエンターテイメントコンテンツを進化させた偉大な作品だと思います。

デビルマン展の企画に関わった際にも改めて、その影響力というものを感じることができました。当時、開催に合わせて東映さん経由で著名人の方々にコメントを頂戴しました。筒井康隆先生や庵野秀明監督であったりと、誰もが知るような著名人の顔ぶれが並んでおり、庵野監督に関しては『シン・エヴァンゲリオン劇場版』公開前のお忙しい時期にも関わらず、コメントしていただいたりしました。

 

もう1作品が、『ソードアート・オンライン』です。

言葉にするのはむずかしいのですけれども、アニメを改めて、本当におもしろいと思った作品になります。同僚に教えてもらったのがきっかけで作品を知り、1話見ただけで、魅入られたことを今でも思い出せます。この作品に触れたことが、アニメの業界に近寄りたいと考えた理由のひとつでもあるので、もし出会っていなかったらこの場にいなかったかもしれません。

漫画のほかにもゲームや音楽などで仕事に影響を受けたものはありますか

 

ゲームに関しては、これというのはあまりないです。ゲームは時間がかかるので、ウェブディレクターだった当時は、常に忙しくて、あまり手を出すことはありませんでした。

 

今は手軽に楽しめるソシャゲなどがあり、遊ぶことは増えましたが、ストーリーに比重を置いたゲームなどはなかなかじっくり遊ぶ機会がありません。

 

音楽でいえばアニソン全般です。30年前からとにかく好きで、アニソンならではの想い・文脈というのは、日本の音楽の中で一番エモーショナルだと思っていたりします。自分のバンドを組んでいたときにも、別のバンドでアニソンのカバーバンドもやっていたりもしていました。

この2023年、YOASOBIを始めとして世界でアニソンが席巻しているのをみると、すごい時代が来たなと思います。

仕事でやりがいを感じるところはどこでしょうか

 

やりがいはもう数えきれないくらいあります。

クリエーターの方々には共感していただけると思うのですが、世の中にないものをつくり出す瞬間というのはなにごとにも代え難い喜びがあります。

 

また新規の企画というのは、最初に考えたものが正解であるケースもあるのですが、何度も揉まれていく中で熟成されていくことが多いと思っています。そしていろいろな人たちとの対話で、熟成されたおもしろいエンターテイメントに出会うのは本当に代え難いです。

 

この世の中には多くの仕事があると思いますが、私の場合、「創る」仕事を辞めてしまうと、心の安定が得られないのではないかとも思ってしまっています。

魂がこの仕事を欲しているというか、本当におもしろくて興味深く、やりがいがある仕事だと思います。

ウェブ業界のときにはユーザーを直接視認できなかったと思うのですが、今の業界に入り、直接見られるようになってからは、ユーザーに対する思いが変化しましたか
 

はい。仰るとおりの変化がおきました。

ウェブサイトでは、月間ユーザーが200万を越えて「この情報を200万人が見るのか」と思うと緊張します。ですがエンターテインメントではないので、間違っていなければそれでいいのです。

 

片やエンターテインメントは、「おもしろくない」たったこれだけで失敗のレッテルが貼られるのでとても緊張します。『THE TOKYO MATRIX』のオープン当初も夜も眠れず。そういうところで、手応えを得ることができたので、やっと枕を高くして寝られると安心しました。

 

仕事の中でメンタルが安定しないときはありますか

 

エンタメはとてもピーキーな仕事でもあるので、クレームも本当に多く、心が傷つくことは多いです。

誰しもがそうですが、批判が多いと心が折れてしまったりします。そこを乗り越えるためにも、コンセプトを骨太につくることが大事だと考えています。コンセプトがあやふやなまま、世に出すと批判されたときにあたふたして、結果心が折れてしまいます。ですが、このコンセプトは正しいと言い切れるようになれば、心を強く保つことができます。ですからなにをやるにしてもここを固めるのは重要だと思います。

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取材風景:若者や学生に向けてのメッセージを真摯に考えてくださいました。

「無駄になることはない。
今できることをがむしゃらに」

「ミライ」を担う10代から20代の人たちに伝えたいことはありますか

思います。強く思います。
やはり自分が主人公というか、自分自身が頑張る体験は、エンターテインメントとしての重みが違うと思うのです。 どこかに足を運ぶ、それそのものに強い価値があると考えています。ですからコロナで失速しなければ早々に増えていたとも思います。実際にそういったエンターテインメントの要望は多くありますし、3年間ほど止まっていたものが、今また始まっているという感じです。

 

そして人間はきっと今その場で、同時に感動を味わうということも好きなんだと思います。ですからネットやVRといった技術が進歩していく中でも、「リアルの価値」はなくならないと思っています。

クリエーターを目指す人たちに向けたメッセージをお願いします

クリエーターというのは、大きく2種類にわかれていると考えています。そのひとつは、秋元康先生やレベルファイブの日野社長、映画プロデューサーの川村元気さんのような、ビジネスマンとクリエーターを両立させるような方です。

 

こういった方々は本当に天才だと思っていて、心から尊敬しています。
彼らは、常に違う考え方を同時に持っているのです。そこが非常に人間としての深みをだしていて、それが無尽蔵のアイディアを生み出す源泉になっていると思っています。日中はビジネス、夜には脚本と常人には考えられないような仕事をしていますが、クリエーターを目指した先には、このような人がいることは認識してほしいです。

片や、職人型のクリエーターという存在もあって、いわゆる神作家・神絵師などと呼ばれる方たちです。彼らは非常にこだわりが強く、高いクオリティを常に追い求めていて、常人とは異なるという点を挙げるのであれば、アウトプットのビジョンがとても明確である点です。

2種類のクリエーターについて話しましたが、このどちらかの道に限定をする、という話ではありません。どちらも目指していいと思います。ただ、どちらにも共通して言えるのが、生産能力を上げたほうがいいだろうということです。
レベル上げの話と似ていますが、積み上げていくことでアウトプットにより一層こだわることができたりもします。成功を収めるうえでは、生産能力・生産性というのは意識していただきたいです。

また、現代のクリエーターは生成AIという重大な局面に直面しています。今までにない事象で、ここをどう乗り越えるかはまだわからないです。向き合い方というのもいろいろ模索していくべきだと思います。ただ、「AIなんて関係ない」などと言っていると本当に詰む可能性もありえます。ですから常に一歩引いた状態から物事を判断できるようになると、今後10年、激動の時代の中でも活躍できると思います。
 

ミライをどのように想像されています​か

未来について考えると、正直げんなりしてしまいますね。さきほど話した生成AIの話もですが、あまりにも変化が激しいからです。ですから若い方々が未来について考えるのは大事だと思う反面、すごく大変だと思います。
そうした中で自分自身が変われるということを忘れずにいてほしいです。「現在の自分の考え」に固執してしまうと、いずれ未来になったときには過去の人になってしまいます。ですが、時代に合わせて自身の変化に躊躇しなければ、新しいなにかを生み出せる未来の人になっているはずです。そうやって意識することが、未来について向き合うことだと考えています。

ここまで散々大変だという話はしましたが、突然未来が奪われることはないです。ぜひ真剣に全力で自分と向き合って、できることを頑張っていただきたいです。


 

●企画/本文構成:飯田 鈴馬

●撮影者:髙野 広輝

●取材&データ作成:飯田 鈴馬、飯島 太陽、髙野 広輝

 

​取材メモ

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今回、アノマリー・クエストのプロデューサーである松平恒幸様の取材をさせていただきました。

場所はアノマリー・クエストが開催されている新宿は東急歌舞伎町タワー内にある会議室でした。

お話の最中、目の中もギラギラと燃えていて、仕事に対する姿勢というものを見習っていきたいと思えました。

未来に対してのお考えを聞いているなかでも、過去の自分を見つめ直しもう少しなにかできることがあったなと反省することもありました。それでもまだ時間は残されているとも思うので、いただいた言葉を胸に自分なりに行動に移していきたいと思います。

お忙しいなか、お時間をいただき、ありがとうございました。(飯田 鈴馬)

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