『歌うクジラ』(上・下)
著者:村上龍
出版社:講談社
この本に目が止まったのはあらすじから見れる世界観からだった、クジラの遺伝子が持つ不老不死の力が変える日本の未来、遺伝子が見つかった100年後の世界、その中で旅をする主人公に自分は興味を持ち、書本を手にとった。
物語は新出島と言われる性犯罪者が隔離されている施設がある島の出身、タナカアキラと同郷の仲間との旅を追う物語である。「歌うクジラ」は人間が不老不死を手に入れた2117年の日本が舞台だ。
2022年クジラから不老不死の遺伝子を手に入れた人間達。日本は「文化経済効率化運動」と、「最適生体」理念による上層、中層、下層の棲み分け制作を推進した。遺伝子操作による賞罰も行われる(功労者は不老不死に、犯罪者は生命を絶たれる)など、精神薬によって人の心を統制、性と記憶のコントロールが行われる。
新出島ではあらゆる自由や文化的なものは生活から奪われてしまう。食事をも制限されていて食材を棒状に練ったものしか与えられない生活を強いられる。住人たちは教育を受ける事も制限されているために、敬語も使えずそれぞれに不思議な話し方をしている。
島民は一体何のために生きているのか、そう思えるほどに過酷な状況の中で生きている。だがその環境が「あたりまえ」なのでなんの疑問も島民は抱かない。新出島で生きた少年の旅は父の死と遺言によって始まる。
アキラ達は旅の途中で出会う人々との交流や広い世界を見ることによって、自分の生活していた新出島での環境や日本社会の異様さに少しづつ気づいていく。
何もかもを制限された世界で見つけた様々なものやアキラが人々と交流していく中では仲間や協力者だけではなくアキラの旅を阻む人間とも出会う。 そこで起こる様々なトラブルやアキラの体験した事の無い喧嘩や暴力なども起きるが、アキラはその経験を力にして成長していく。
旅を通してのアキラの成長や旅の果てに得るものはなんなのか、父が残した遺言を届けた先にあるのは喜劇なのかそれとも悲劇なのか、真実をその目で見届けて欲しい。
Commentaires